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Category : ブランドストーリー

第2章|意匠の道のりⅡ

2015.08.08 Saturday

 

第2章 意匠の道のり     家具デザイナー 山本真也

― 時間を超えて愛されるデザイン ―

家具デザインをしたいといっても、当時は家具メーカーにデザイナーの求人などはなかったので、
インテリアデザイン会社で内装設計やプロダクトデザインを実践的に学んだ。
空間やヒューマンスケールについて多くの訓練を受けた期間でもあった。

その後、商業デザイナーとして独り立ちした。
一人でプロセス全体に責任を持つことで、そこでしか得られない発想や
クオリティーを学ぶこともできた。

2MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_デザイナーしかし什器や店舗の内装は、新しさ、斬新さこそが求められ、
永く使われるようにデザインされることは少ない。
什器と家具、この二つはデザインという言葉は同じでも考え方が全く違う。
作っては数年でリニューアルというサイクルに、
デザイナーとして満ち足りないものを感じていた。

そんなときに河尻さんと出会ったのだった。
だから、この家具を手がけたいと強く思った。

 

― 答えは木が教えてくれる ―

正直に言えば、このプロジェクトがスタートした当時は
今のようには樹のことも木製の家具のこともよく分かってはいなかった。

まず無垢材について経験値が圧倒的に足りなかった。
無垢の木は湿度の変化によって「動く」「あばれる」。
木目の方向を考えながら、その「動き」や「あばれ」を手なずけなければならない。
頭では知っていても経験的な知識ではなかった。

丸太から製材をして天然乾燥させ、次に人工乾燥にかけ、
養生期間を経て初めて材として使えることも知ってはいたが、
実際に体験したことはなかった。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森_家具デザインでは多くの場合、製材された材料を前提にして考える。
ところがMOCTAVEは、その製材のところから考えなくてはならない。
材料にする広葉樹は、小径木の若い木が多く、それだけ動きやすい。
けれども製材の仕方一つで、作りやすくなり無駄も減らせる。

さらに樹種本来の色味をだすためには、材によって天然乾燥の期間も変わってくる。
そんな製材方法までプロジェクトチームで考え、進めていくのがMOCTAVEなのである。
それが正しい時もあれば間違っている時もある。
答えは木が教えてくれる。

だから毎日、ぼくたちは木と知恵くらべをしている。
そして今、おそらくぼくは日本の家具デザイナーとして、とても貴重な経験をしているのだと思う。

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第2章|意匠の道のりⅠ

2015.08.07 Friday

 

第2章 意匠の道のり     家具デザイナー 山本真也

― 広葉樹に圧倒された ―

「小径木の広葉樹の木材を活かしたい」
「その多彩な表情の素晴らしさを、多くの人に知ってもらえるような何か、を作りたい」

初めて会ったとき、プロジェクト・オーナーの河尻さんはそう語った。
連れて行ってもらった倉庫で積み上げられた木材を見上げると、木の力強さに圧倒された。
まるで語りかけてくるような迫力とでも言ったらいいのだろうか。

初めて耳にする樹種も多く、こんなに種類や色があるとは思ってもいなかった。
気がつくと「この表情をどうしたら伝えることがでるだろうか」と考え始めていた。
今から思えば、積み上げられた木材の前で二人の気持ちが共振したのかもしれない。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_デザイナー

そして、これを表現するのは家具しかないと確信した。
なぜなら、家具は人々の生活の中に根差して一緒に暮らすものであり、
服などと同じようにその人の考えや生き方、感性そのものを表現するものだからだ。
特に木の家具は人とともに暮らす中で、人と同じように成長していく。

 

 

― なんて美しい家具なんだろう ―

高校生のとき、美しい家具に魅せられた。
美術が好きで、少年時代までは絵描きになりたいと思っていた。
それが大きく軌道修正したのは、デンマークの家具デザイナーである
ハンス・J・ウェグナーのザ・チェアを見たときだった。

デザインはもちろん素晴らしい。
しかし、それ以上に作った人の心まで伝わってくるようで、衝撃だった。
そして、家具デザインをやろうと決意した。
美大に進んで、絵ではなく、プロダクトデザインを学んだ。
とにかく家具をデザインしたかった。

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第1章|樹への想いⅣ

2015.08.06 Thursday

 

第1章 樹への想い   プロジェクトオーナー河尻和憲

― 「大きな物語」を紡ぐ ―

今、日本の広葉樹の木材供給は衰退している。
その理由は、大量消費の中でコストの低い輸入材が使われるようになったためで、
その結果、高山でも家具用としてはほとんど供給されなくなっている。

日本の材を使っていかなければ、こうした衰退を止めることはできない。
山も森も、林業や木材業が成り立たなければ荒れていき、よい木材を供給できなくなってしまう。
このプロジェクトは、小径木の広葉樹をできる限り使うことで
日本の森林を育て循環させ、守っていこうとしている。

今の日本で販売されている家具のほとんどは
中国や東南アジアの工場で大規模ラインによって生産されている。
ラインで生産される家具は一人の職人で一つの家具を作り上げるわけではない。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_職人Ⅳ-2たとえば、部品としての椅子の脚を削り出す人、その脚を組みつける人。
そのように細分化された作業で構成されている。

けれども、MOCTAVEの家具職人は1人で椅子1脚を作る。
1人でテーブル1台、キャビネット1台を作るのだ。
家具のことが好きで好きでなければ、そんな職人になることはできない。
そして、その家具職人の技術が継承されていくためには
愛される家具を送り出し、使い続けてもらうことしかない。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_職人Ⅳ

 

―  使い込むほどに愛着の湧く家具に ―

だから、MOCTAVEは壊れたり古くなったりしたら、捨ててしまうような家具ではない。
20年でも30年でも使い、そしてもし傷んだら修理して使ってほしい。
そんな生き方を愛する人にこそふさわしい家具である。

2007年のプロジェクトのスタートから試行錯誤し、ウィスキーが樽の中で熟成するように、
時間をかけてじっくりと磨き上げられたMOCTAVE。

今、ここに送り出すことができる喜びを噛みしめている。

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第1章|樹への想いⅢ

2015.08.05 Wednesday

 

第1章 樹への想い   プロジェクトオーナー河尻和憲

― 運命的な出会い ―

広葉樹については詳しくなった。
詳しくなればなるほど、もっと多くの人に知ってもらいたいという想いが募った。
しかし、製材して天然乾燥させている木材を、どうしたら活かすことができるのか・・・。

そんなときに出会ったのが、化粧品会社の什器や空間デザインも手掛けていた家具デザイナーの山本さんだ。
東京から岐阜に会いに来てくれた。

積み上げられた材を見つめて、立ち尽くし、ぽつりと言った。
「木が語りかけてくるようで圧倒された」

運命的な出会いだった。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森Ⅲ

― モクターブ・プロジェクト ―

私と山本さんが手さぐりで始めた家具作り。
そこに大きな援軍が現れた。家具プロデューサーの大澤勝彦さん。

岐阜の広葉樹を使う。高山の家具職人の技術を最大限に発揮してもらう。
そんな想いを共有しつつ、家具プロデューサーが加わることで
本格的なビジネス・プロジェクトの立ち上げとなった。

木が奏でる音楽のような調和を暮らしの中で楽しんでもらいたいという想いを、MOCTAVEには込めている。

 

―  常識破りの家具作り  ―

デザインは家具にとって最も重要な要素である。
何度も試作を重ね、多くの人からレビューを受け、それを繰り返しながらデザインが練り直された。
そうしてようやく思い描いたデザインに到達することができた。
ただ、そのデザインは家具作りの常識とは、かなり異なったものである。

普通の家具は大径木の木材で、できる限り工程数を少なくして効率的に作る。
そうしなければ、採算が取れないからだ。

しかし、モクターブ・プロジェクトが行きついたデザインは
効率化とコストを優先する家具作りから見れば常識破りだ。
この家具は小径木の木材も多く使い、広葉樹が持つ驚くほど多彩な表情を取り入れる。
だから工程数は普通の家具の何倍にも達する。
それほどに手がこんでいるし、作り方も難しい。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森_職人Ⅲ

― コンセプトと信念が共鳴した  ―

MOCTAVEの製造は高度な技術が要求され、高コストも予測される。
やはりこのプロジェクトのコンセプトに共感してくれる作り手でなければ・・・。
そうして多くの家具職人さんたちに試作を依頼した。

MOCTAVEに共感して担ってくれる家具職人さんたちは、一人が一つの家具を責任をもって手掛ける。
そうした作り方を信念にしている人たちに出会うことができた。
そして不思議なことに、みな高山の家具職人でありながら
全国各地から家具を作るために高山に移り住んできた人たちだ。
しかも誰もが木と樹のことが大好きで、その魅力も難しさも知り尽くしている。

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第1章|樹への想いⅡ

2015.08.04 Tuesday

 

第1章 樹への想い   プロジェクトオーナー河尻和憲

― この樹を何かに活かせたら ―

広葉樹が持つ表情の面白さに気がついたのは、10年程前のことだ。
杉や檜などの針葉樹とともに、非常に多くの種類の広葉樹も山から切り出され工場に運び込まれてくる。
ただただ、その多彩な表情に魅せられた。すべてチップにしてしまうには、あまりにも惜しかった。
そう思った木は製材し、天然乾燥のために寝かせておいた。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森Ⅱ

とりあえずの目的はなかった。
あったのは「これを、いつか何かに使ってみたい」という漠然とした想いだけだった。
そして同時に、木材としてだけでなく、森に生えている樹のことを
もっと知りたいという想いに駆られるようになった。

樹のことについてセミナーがあると聞けば、どこへでも出かけた。
本も数え切れないほど読んだ。気がつけば森林インストラクターの資格も取っていた。
今も、年に何度かは、森の中で樹のことを子供たちに教える。

 

―  ドングリ拾い ―

毎年秋に、ある目的をもって山に入り続けている。

その目的とは、ドングリ拾い。
自分を魅了してやまない広葉樹を種から育てみたいと思ったのだ。
毎回数百個のドングリを拾い、三日間水に漬けておく。
その水も、ドングリが酸欠で死んでしまわないように流水である。

虫に食われたものは拾わないようにしていても、それでも虫食いが混じる。
虫に食われていない、沈んだドングリだけを湿らせたオガクズに埋めて冷蔵庫に保管する。
秋の間に冷蔵庫の中で根が出る。そして翌年の春に鉢に植える。

拾ったドングリの全部が発芽にまで至るわけではない。
自然の営みは厳しいものだと、気づく瞬間でもある。
そして二年を過ぎると、鉢から庭に移植する。
こうして育った苗木は、とても愛おしい。

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第1章|樹への想いⅠ

2015.08.03 Monday

 

第1章 樹への想い   プロジェクトオーナー河尻和憲

― 広葉樹に魅せられて ―

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森たとえば朴(ホオ)の木は、割ってみると中は淡い灰緑色をしている。
けれども年が経つにつれ暗く濃い緑褐色になっていく。
あるときからそんな広葉樹の持つ奥深い世界に魅せられてしまった。

広葉樹には実にさまざまな表情がある。
まっすぐに伸びる樹種が多い針葉樹と違って、太く曲がっているものが多い。
幹も固い。立っている様も個性的だ。
同じ樹種でも生えている場所によって表情がまるで違う。
一本の樹の中でも南側か、北側か、根元に近いか先端部かで色合いや木目の表情が変わる。
そして時間の経過によっても変化するのだ。

私が、破天荒ともいえる挑戦的な家具プロジェクトを始めようと決意した出発点には
このような広葉樹の持つ多様性と美しさへの驚きがあった。

 

―  森が恋しい ―

岐阜で育った私にとって遊び場は雑木林だった。
カブトムシやクワガタをとったり、樹の上に秘密基地を作ったり。

当時はテレビゲームなどない時代。
でも雑木林にはアイデア次第で遊びのネタはいくらでもあった。
樹が、森が、すぐそこにあって、それが当たり前の環境の中で育った。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森2だから東京の化粧品会社に勤めるようになっても、いつも田舎の風景が心のどこかに在った。
樹や森がそばにないことが、自分の中の何かが欠けているような気がしてならなかった。

サラリーマンを辞めて故郷に戻ってきたのは、紙の原料を作るチップ工場を継ぐためだった。
長年勤めた会社員としてのキャリアを捨てることには、周囲から驚かれ反対もされた。
けれども心の中の深いところでは、これで樹や森に囲まれて暮らせる、
心にしまっていた自分を取り戻せるという想いもあった。

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プロローグ:人生をともにできる家具

2015.08.02 Sunday

MOCTAVE_広葉樹_木_家具_

それは岐阜の広葉樹に魅せられた一人の想いから始まった。
その想いに家具デザイナーやプロデューサーが共感し、
高山の地で活動する家具職人たちの想いと共振した。

工場でのライン生産ではなく、個人工房において
職人が一人で一つの家具を木取りし、組み立て、仕上げる。

MOCTAVE_家具_木_職人

木材は岐阜で育った三十数種類にも上る広葉樹から選ぶ。
その多彩な表情を、一つの家具に組み込む。

樹種によって樹齢や生育が違い、比重も異なる。
当然、手間もかかり加工も難しい。

多くの家具工場は尻込みをした。
しかし、個人工房を営む家具職人たちがこの新しい家具作りに挑む。

 

”すぐに飽きられるような家具ではなく
いつまでも愛され使われ続ける家具を作りたい”

”日本では少なくなってしまった家具職人の伝統的な技術を生かしたい。
そして生かすことで引き継いでいきたい”

”日本の広葉樹が持つ可能性を材にして用いることで切り拓きたい”

”日本人が伝統的に培ってきた、室礼(しつらい)に代表される
美しく棲まう暮らしの価値観を二十一世紀の今日により豊かに甦らせたい”

そんな思いを共有した家具プロジェクトである。

 

「愛されない家具は作らない」

 

その家具の名はMOCTAVE。
日々の暮らしに木々の多彩な表情を映し
一オクターブ上の心地よさを奏でるようにと名づけられた。

MOCTAVEの紡ぐ「大きな物語」をお届けする。

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