第2章 意匠の道のり 家具デザイナー 山本真也
― 家具職人の「手の力」 ―
もちろん、家具を形にしていくには職人の技が欠かせない。
しかし家具職人なら誰でもいい、というわけにはいかない。
木のことをよく知っている人、木が好きで木との知恵くらべを楽しめる人でなければ
MOCTAVEを作ることはできないからだ。
そしてモノづくりが本当に好きで、そこに自分を捧げている人、それがクラフツマンシップであり、
その姿勢がにじみ出てくるのが職人の「手の力」なのだと思う。
それがなければ、とても取り組めないのがモクターブという家具なのである。
そう思って家具職人を粘り強く探し続けた。
そのために、東京・新宿の事務所を引き払い、飛騨に拠点を移した。
そして、これはと思った腕のいい職人さんを一人ずつ工房に訪ねて行った。
コンセプトを語り、デザインを見てもらい「面白い」と思ってくれる人だけが残った。
それが、永田さん、宮沢さん、山内さんの三人の家具職人だった。
高山の家具職人を代表する大ベテランの永田さん、中堅として意欲的に活動している宮沢さん、
そして製材にも詳しい若手の山内さん。
試作しては、樹種や配置をデザイン面、製作面から検証し意見を戦わせる。
気がつけば何時間も経過している。
こんな組み合わせは、このプロジェクト以外では二度と実現することはない。
― いつまでも変わらない美しさこそ ―
このプロジェクトは、家具デザイナーと家具職人が互いを尊敬し、戦い、調和して家具を作る。
だからこそ、モクターブは職人さんの「手の力」が感じられるデザインを追求してきた。
20年近く前にザ・チェアを見たときに感じたことを、
自分たちのやり方で手を加え、深化させ、また人々に伝えるのだ。
そして、デザインには新しさも取り入れるけれど
それは何十年使っても古くならない新しさでなければならない
。何十年も使ってもらいたい家具だからこそ、そのことにこだわりぬいた。
それが、MOCTAVEにかけた家具デザイナーとしての想いである。