第3章 匠の手Ⅴ
― 天性のモノづくり感性で、手際よく、正確に、美しく ―
あま木工所 山内 宏俊
山内はとても木に詳しい。家具作りを始めたら木のことをもっと知りたくなり、
木材のことをより学ぼうと製材所で三年間修行を積んだ。
愛知県で生まれ、専門学校でインテリアを学んでから建具屋で働いた。
次第に家具に興味が湧いてきて、職業訓練校で家具作りを学んでから高山の工房に来た。
三~四人規模の工房で、主宰者は山内に材料となる木材の買いつけ、
木取り、加工から塗装まで一人で担当させてくれた。
分業しないで、すべての工程を自分一人で担ったことが、若い山内にとっての財産となった。
そして、三年後に製材所に修行のために移った。
広葉樹の製材は特殊で、扱っている製材所も少ない。
そこで原木の買いつけや乾燥の仕方、原木から良材を得るための製材を学んだ。
木は奥深い。
たとえば丸太に膨らみがある。
中に本当に節があるのかどうかは、切ってみなければ分からないが、
膨らみの形状からある程度予測することができる。
切ってみて、きれいな木目が出ると嬉しくなる。
製材一つで、材料の価値も変わってくるからだ。
その後、独立して個人工房を開いた。
最初は頼まれて、一枚板を磨いて平面を出す仕事を請け負っていた。
木が好きな山内にとって、無心になって取り組める仕事だったが、
次第に建築家や大工さんから家具作りの仕事を頼まれるようになった。
そして口コミで評判が広がっていった。
木と家具以外に山内が心ひかれるものが、大工道具だ。
いい道具は見ているだけでも惚れぼれする。
木を切ったり削ったりするのも、道具を使うのが楽しいからかもしれないと思うことすらある。