第2章 意匠の道のり 家具デザイナー 山本真也
― 広葉樹に圧倒された ―
「小径木の広葉樹の木材を活かしたい」
「その多彩な表情の素晴らしさを、多くの人に知ってもらえるような何か、を作りたい」
初めて会ったとき、プロジェクト・オーナーの河尻さんはそう語った。
連れて行ってもらった倉庫で積み上げられた木材を見上げると、木の力強さに圧倒された。
まるで語りかけてくるような迫力とでも言ったらいいのだろうか。
初めて耳にする樹種も多く、こんなに種類や色があるとは思ってもいなかった。
気がつくと「この表情をどうしたら伝えることがでるだろうか」と考え始めていた。
今から思えば、積み上げられた木材の前で二人の気持ちが共振したのかもしれない。
そして、これを表現するのは家具しかないと確信した。
なぜなら、家具は人々の生活の中に根差して一緒に暮らすものであり、
服などと同じようにその人の考えや生き方、感性そのものを表現するものだからだ。
特に木の家具は人とともに暮らす中で、人と同じように成長していく。
― なんて美しい家具なんだろう ―
高校生のとき、美しい家具に魅せられた。
美術が好きで、少年時代までは絵描きになりたいと思っていた。
それが大きく軌道修正したのは、デンマークの家具デザイナーである
ハンス・J・ウェグナーのザ・チェアを見たときだった。
デザインはもちろん素晴らしい。
しかし、それ以上に作った人の心まで伝わってくるようで、衝撃だった。
そして、家具デザインをやろうと決意した。
美大に進んで、絵ではなく、プロダクトデザインを学んだ。
とにかく家具をデザインしたかった。
家具 ・ インテリアショップ MOCTAVE | 東京・代官山