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Category : 樹と木の話

第4章 | 森の響き [桑・山漆]

2015.09.02 Wednesday

 

モクターブ 広葉樹図鑑

もくたーぶ広葉樹図鑑P34

 

[右]
桑  クワ・ヤマグワ(クワ科)
Morus bombycis

養蚕用のクワは中国原産で多くの品種があり、畑に植えられているため
低い樹と思いがちですが、ヤマグワは10m以上になります。
葉は卵形や裂けた形など、一本の木でも様々な形が見られます。
夏には甘酸っぱいクワイチゴが実り食用としても有用な樹です。

材は黄味を帯び、強靭で保存性が高く経年変化で光沢のある褐色になります。
しかし、そのような材になるほどの太い樹はまれにしか見られず、きわめて希少な高級装飾材です。

[左]
山漆   ヤマウルシ(ウルシ科)
Rhus trichocarpa

秋に他の落葉樹に先駆けて鮮やかな紅葉を見せてくれますが、
樹液でかぶれることがあるため嫌われる木でもあります。
まれに大きく成長し木材として利用できる場合でも、
製材する人は注意しないとかぶれてしまうことがあります。

材の色は強い黄色味を帯びていますが時間とともに茶褐色に変化します。
タンニンが多く、脂気(やにけ)も多いので腐りにくい材で、工芸品などに使われます。
ちなみに漆器に使われる「漆」は樹液採取用に栽培されたものです。

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第4章 | 森の響き [山猫柳・水目]

2015.09.01 Tuesday

 

モクターブ 広葉樹図鑑

広葉樹図鑑P33

[右]
山猫柳   ヤマネコヤナギ・バッコヤナギ(ヤナギ科)
Salix bakko

ヤマネコヤナギ・バッコヤナギ(ヤナギ科)

900種以上あるヤナギの一つで、日当たりの良い斜面に多く見られ、
まれに15m程度まで成長します。
早春に黄緑色の花をたくさんつけるため、その存在がよくわかります。

学名に「bakko」と付いているように日本固有種です。
「バッコ」は、この葉を好んで食べる牛のことを東北弁で
「ベコ」と呼ぶことに由来するという説があります。

材は淡い黄褐色で適度な軟らかさを持つため、まな板などに使われます。

[左]
水目   ミズメ(カバノキ科)
Betula grossa

この樹は別名「アズサ」といいます。皇太子徳仁親王のお印でもあります。
材木屋さんは「ミズメザクラ」と呼ぶことがありますが、
サクラの仲間ではなくカバノキ科です。
樹皮もサクラにやや似ていますが、サクラほど茶色くなく灰色をしています。

特徴的なのは、樹皮や枝を少し傷つけて匂いを嗅いでみると
消炎鎮痛剤に使われるサロメチールに似た匂いがすることです。

材は心材が淡い紅褐色、辺材は黄白色をしており、緻密で高級材として用いられます。

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第4章 | 森の響き [水楢・水木]

2015.08.31 Monday

 

モクターブ 広葉樹図鑑

広葉樹図鑑P32

[右]

水楢   ミズナラ(ブナ科)
Quercus crispula

里山の雑木林でもよく見かけるコナラと異なり、
より冷涼な森林にブナなどと一緒に生育しています。
葉はコナラと比べ葉縁の鋸歯(ギザギザ)が大きいこと、
また葉柄(葉の付け根の軸)がほとんどないことで見分けられます。

材は硬く重厚感があるため、フローリングや家具などに使われます。
かつてはヨーロッパなどにも高級材として輸出されていた歴史があります。
またウィスキーの熟成樽材(ジャパニーズオーク)としても人気があります。

 

[左]
水木   ミズキ(ミズキ科)
Swida controversa

庭木として人気のあるヤマボウシ、ハナミズキなどもこの仲間です。
「ミズキ」の由来は春先に枝を切ると樹液がしたたるので、この名があります。
飛騨地方で木材関係者は「ミズクサ」と呼ぶことが多いようです。
規則的に1年毎に輪生状に枝を伸ばすため、きれいな樹形になります。

材はやや青みがかった淡白褐色で、おとなしい感じがします。こけし、玩具などに用いられます。

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第4章 | 森の響き [朴・椈]

2015.08.30 Sunday

 

モクターブ 広葉樹図鑑

広葉樹図鑑P31

[右]
朴   ホオ・ホオノキ(モクレン科)
Magnolia obovata

岐阜の人にとっては最もなじみの深い広葉樹で、朴葉ずしや朴葉味噌など
大きな葉を利用した色々な料理があり、そのため家の庭先に植えられているのをよく目にします。

材は軟らかく年輪による硬さの差が少ないため刃物の通りが良く、
刃も痛めないことから版画板やまな板にも使われます。

心材は他の木材には見られない緑がかった灰色をしていますが、時間の経過とともに褐色に変化してきます。

 

[左]
椈   ブナ(ブナ科)
Fagus crenata

漢字では「橅」とも書き、山にごく当たり前にある役に立たない(木で無い)という字があてられたほど、
以前は評価の低かった樹でした。

しかし最近はブナの原生林・白神山地に代表されるように環境面で評価されています。
森の王者のような堂々とした樹形に比べ、双葉と本葉を出したばかりの新芽は
まるで踊るバレリーナのようです。
曲げに対して強いことから椅子など曲線が活かされる曲木家具に多く使われますが、最近は大半がヨーロッパ産です。

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第4章 | 森の響き [藤木・榛]

2015.08.29 Saturday

 

モクターブ 広葉樹図鑑

広葉樹図鑑P30

[右]
藤木  フジキ(マメ科)
Cladrastis platycarpa

あまり知られた樹ではないため「フジ(藤)」の別名と思われがちですが、
ツル性ではなく自立する木で15m以上になります。
また花はフジが4~5月に紫や白色の花を咲かせるのに対しフジキは6~7月頃に白い花を咲かせます。
材は淡い黄色で木目は明瞭です。
材としてもあまり一般には知られていませんが、いろいろな木工品や器具に使われています。

 

[左]
榛  ハン・ヤマハンノキ(カバノキ科)
Alnus hirsuta

ハンノキの仲間のヤマハンノキです。
ハンノキは湿った低地などに、ヤマハンノキは山林の崩壊地などに、
どちらも土地の痩せた所に進出してきます。

その理由は、ハンノキには根の周りの根粒菌と共生して
空気中の窒素を固定し肥料とする能力があるためで、
このおかげで痩せた土地でも高木になることができます。

ハンノキの材の特徴として、伐採直後の切口やスチームに当たった面は
すぐにオレンジ色に変化してきます。

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第4章 | 森の響き [合歓・夏椿]

2015.08.28 Friday

 

モクターブ 広葉樹図鑑

広葉樹図鑑P29

[右]
合歓   ネム・ネムノキ(マメ科)
Albizia julibrissin

オジギソウのように細かい葉が多数からなる偶数二回羽状複葉で、
全体で1枚の葉です。
夜は相対する小葉が閉じるため、この名があります。

7月になると長い淡紅色の雄しべをたくさんもった、まるで刷毛のような花を頭上につけ、
どことなくトロピカルなムードを漂わせます。

材は、マメ科によく見られるように心材が濃褐色をしていますが、大きな板を取れるほど大径木にはなりません。

[左]
夏椿   ナツツバキ(ツバキ科)
Stewartia pseudocamellia

文字通り夏に花が咲くツバキで、白い花を咲かせます。
また葉は普通のツバキと違い、秋には落葉します。樹皮が非常になめらかで、
斑らに薄く剥がれるので独特の模様となります。

沙羅木(シャラノキ)と呼ぶこともありますが、「沙羅双樹」とは全く別物の樹種です。
材は、樹皮の特徴を活かして床柱にしたり、彫刻に使われたりします。

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第4章 | 森の響き [白楊・栃]

2015.08.27 Thursday

 

モクターブ 広葉樹図鑑

広葉樹図鑑P28

[右]
白楊   ドロ・ドロノキ(ヤナギ科)
Populus maximowiczii

材質が軟らかいためこの名があります。
別名を「ドロヤナギ」といい、漢字表記の「楊」という字もヤナギのことを表します。
本州中部以北の谷沿いなど湿った場所に生育し、幼木時期は樹皮に横に菱形の模様が現れ、
大木になるにつれ縦に深い裂け目が現れるようになります。

材はとても軽く、用途としてはマッチの軸や箱材などに使われますが、
かつて同属の「ヤマナラシ」の材は、昭和初期の戦闘機の翼の一部にも
集成材にして使われたことがあります。

[左]
栃   トチ・トチノキ(トチノキ科)
Aesculus turbinate

ヨーロッパの街路樹マロニエはこの仲間で、大きな掌状の葉に特徴がある樹です。
大きく愛嬌のある形の実はアクが強く、そのままではとても食べられませんが、
先人は手間ひまをかけてそのアクを抜く方法を見つけ、餅に入れるなど食用にしてきました。

材は光沢があり非常にきめが細かく、シルキーな感じで女性的なイメージを与えます。
とても大きく太く成長する樹で、独特な杢(モク)が出たものは高級材としてテーブルなどに利用されます。

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第4章 | 森の響き [栓・椣]

2015.08.26 Wednesday

 

モクターブ 広葉樹図鑑P27[右]
栓   セン・センノキ(ウコギ科
Kalopanax pictus

「セン(センノキ)」はどちらかというと木材用語で、枝や若木には鋭いトゲがあるため
一般には「ハリギリ」と呼ぶことが多いようです。
葉はカエデのように見えますが、カエデよりかなり大きく厚みがあり、
別名テングウチワの名があります。
材は年輪が明瞭に出るためケヤキに似ており、「ニセケヤキ」という、
ありがたいような、そうでないような名前で呼ばれることがあります。

 

[左]
椣  シデ・クマシデ(カバノキ科)
Carpinus japonica

南飛騨地方では比較的普通に見られる樹で、クマシデ、アカシデ、イヌシデなど多くの種類があります。
果穂が垂れ下がる様子が注連縄に吊るされる紙垂(シデ)に似ているためこの名があります。
樹皮はなめらかな灰褐色で、「シデ目」と呼ばれる縦縞模様があるため年輪も波打った模様になり、
板にするとこれが目として現れ、面白い模様になります。
製材すると灰白色で、材質的には乾燥時に割れが入りやすく、やや扱いにくい材です。

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第4章 | 森の響き [沢胡桃・桜]

2015.08.25 Tuesday

 

モクターブ 広葉樹図鑑P26[右]
沢胡桃   サワグルミ(クルミ科)
Pterocarya rhoifolia

その名の通り谷の沢筋に見られますが、小さく垂れ下がる実が成るだけで、
オニグルミのような食べられる実は成りません。
とても軽く軟らかい材質で、その利点を生かしマッチ棒や下駄に使われることもありますが、
建築・家具分野ではあまり耳にしない名前です。

しかし森の中では、広葉樹には珍しくまっすぐ立ち、枝ぶりも綺麗で
時には30mほどの大木になるので堂々としていて、いかにも「森の樹」らしい木です。

 

[左]
桜   サクラ・ヤマザクラ(バラ科)
Prunus jamasakura

若葉の芽吹きと同時に開花するので、身近なソメイヨシノのような豪華さはありませんが、
江戸時代以前の花見といえばヤマザクラだったようです。

サクラの語源は諸説ある中で、日本書紀以前の日本では豊作の神を「さ」神と呼び、
座られた場所(「くら」)にその証として花が咲く、という説があります。

サクラは日本人にとって欠かせない樹であることがわかります。
用途は、装飾材、家具、楽器、彫刻など。またチップは香りがよく燻製用に使われます。

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第4章 | 森の響き [小楢・玄圃梨]

2015.08.24 Monday

 

モクターブ 広葉樹図鑑P25[右]
小楢   コナラ(ブナ科)
Quercus serrata

里山で普通に見られ、私たちには最も身近なドングリが成る広葉樹です。
樹の大きさからではなく葉の小ささから「コナラ」と呼ばれるようで、
樹は大きなものでは直径1m近くになるものもあります。

材は重く硬いため燃料にすると火もちが良く、樹齢30~40年生ぐらいまでは
伐採してもその根株から芽が出て再生するため、昔から薪炭材として利用されてきました。

家具以外に薪ストーブに最適の薪として、またシイタケ栽培の原木にも多く利用されます。

 

 

[左]
玄圃梨  ケンポナシ(クロウメモドキ科)
Hovenia dulcis

名前も属する科の名前も、あまりなじみのない樹かもしれません。
食用になるナツメはこの仲間です。樹木名に「~ナシ」とついているのは
実を支える柄の部分の味と香りが梨に似ていることに由来しています。

材は辺材(芯から離れた周りの部分)と心材(芯に近い部分)とで極めて明瞭な色の違いがあり、
床柱、床板、装飾材、化粧用単板、家具、楽器などに使われます。

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