BLOG

Category : デザイン

第2章|意匠の道のりⅣ

2015.08.10 Monday

 

第2章 意匠の道のり     家具デザイナー 山本真也

― 家具職人の「手の力」 ―

もちろん、家具を形にしていくには職人の技が欠かせない。
しかし家具職人なら誰でもいい、というわけにはいかない。
木のことをよく知っている人、木が好きで木との知恵くらべを楽しめる人でなければ
MOCTAVEを作ることはできないからだ。

そしてモノづくりが本当に好きで、そこに自分を捧げている人、それがクラフツマンシップであり、
その姿勢がにじみ出てくるのが職人の「手の力」なのだと思う。
それがなければ、とても取り組めないのがモクターブという家具なのである。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森_職人Ⅲ

そう思って家具職人を粘り強く探し続けた。
そのために、東京・新宿の事務所を引き払い、飛騨に拠点を移した。
そして、これはと思った腕のいい職人さんを一人ずつ工房に訪ねて行った。
コンセプトを語り、デザインを見てもらい「面白い」と思ってくれる人だけが残った。

それが、永田さん、宮沢さん、山内さんの三人の家具職人だった。

高山の家具職人を代表する大ベテランの永田さん、中堅として意欲的に活動している宮沢さん、
そして製材にも詳しい若手の山内さん。
試作しては、樹種や配置をデザイン面、製作面から検証し意見を戦わせる。
気がつけば何時間も経過している。

こんな組み合わせは、このプロジェクト以外では二度と実現することはない。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_職人Ⅳ

 

― いつまでも変わらない美しさこそ ―

このプロジェクトは、家具デザイナーと家具職人が互いを尊敬し、戦い、調和して家具を作る。
だからこそ、モクターブは職人さんの「手の力」が感じられるデザインを追求してきた。
20年近く前にザ・チェアを見たときに感じたことを、
自分たちのやり方で手を加え、深化させ、また人々に伝えるのだ。

そして、デザインには新しさも取り入れるけれど
それは何十年使っても古くならない新しさでなければならない
。何十年も使ってもらいたい家具だからこそ、そのことにこだわりぬいた。

それが、MOCTAVEにかけた家具デザイナーとしての想いである。

<  ブランドストーリー 目次  >

 

家具 ・ インテリアショップ MOCTAVE | 東京・代官山

第2章|意匠の道のりⅢ

2015.08.09 Sunday

 

第2章 意匠の道のり     家具デザイナー 山本真也

― オスティナート・パターンが生まれた ―

多彩な木の表情を活かす。
それがモクターブの最大のコンセプトである。
三年半ほどの間に何十ものデザイン案を出しては検討してきた。
木の表情を引き立てるために、一部に金具やガラスなどの素材を用いることも決めた。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_デザイナー_パーツそうして、椅子とテーブル、キャビネットとサイドボードという最初の四つのデザインが固まった。
広葉樹の多彩な表情を組み合わせ、その一つひとつの材の持つ表情の違いを調和とリズムで表現する、
独自のオスティナート・パターンができ上がったのである。

オスティナートとはバロック音楽によく現れる、
同じパターンやリズムを繰り返し反復させることで、
聴く人に心地よさを感じさせる技法のことである。
種々の樹々の配置の反復が、見る人に心地よいリズム感と
調和性を感じさせることから、そう名づけた。

デザインに込めた想いは、第1に無垢材の持つ力強さや存在感を
しっかりと表現したいということだ。
だから木の様々な面が見えるように配置した。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_デザイナー_職人第2は光が生む陰影をデザインに取り込むということである。
オスティナート・パターンの材に敢えて隙間を設けることで、テーブルでは上から射す光が、
床に木漏れ日のような柔らかな陰影を描く。
キャビネットやサイドボードでは、扉を開けたときに背面から入ってくる光が、内部に光芒を生み出す。

加えて、オスティナート・パターンの凹凸が光の当たる角度によって影の変化をもたらすため、
昼と夜、あるいは太陽の光の射す方向などで、時間によって異なる表情を生み出すのである。

2MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_職人MOCTAVEのデザインモチーフは基本的に直線主体だが、
椅子は背もたれの部分が両サイドまで湾曲して回り込むラウンドチェアのフォルムを採用した。
そしてこの湾曲した木の外側に、抉るようなカーブを設けている。
この曲面は機械では削りきれない部分が出る。
これを職人の丹念な鉋がけにより滑らかに削り仕上げる。
フォルムに人が触れるとき微妙な優しさを感じるはずだ。

使う人には家具に毎日、触ってほしい。
その姿を見て美しいと感じてほしい。
機能的に用途を満足させているのはもちろんだが、家具は毎日、触って、見て
「いいなぁ、美しいなぁ」と思えるものであってほしい。

そうしたデザインフィロソフィーを、MOCTAVEには込めた。

<  ブランドストーリー 目次  >

 

家具 ・ インテリアショップ MOCTAVE | 東京・代官山

第2章|意匠の道のりⅡ

2015.08.08 Saturday

 

第2章 意匠の道のり     家具デザイナー 山本真也

― 時間を超えて愛されるデザイン ―

家具デザインをしたいといっても、当時は家具メーカーにデザイナーの求人などはなかったので、
インテリアデザイン会社で内装設計やプロダクトデザインを実践的に学んだ。
空間やヒューマンスケールについて多くの訓練を受けた期間でもあった。

その後、商業デザイナーとして独り立ちした。
一人でプロセス全体に責任を持つことで、そこでしか得られない発想や
クオリティーを学ぶこともできた。

2MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_デザイナーしかし什器や店舗の内装は、新しさ、斬新さこそが求められ、
永く使われるようにデザインされることは少ない。
什器と家具、この二つはデザインという言葉は同じでも考え方が全く違う。
作っては数年でリニューアルというサイクルに、
デザイナーとして満ち足りないものを感じていた。

そんなときに河尻さんと出会ったのだった。
だから、この家具を手がけたいと強く思った。

 

― 答えは木が教えてくれる ―

正直に言えば、このプロジェクトがスタートした当時は
今のようには樹のことも木製の家具のこともよく分かってはいなかった。

まず無垢材について経験値が圧倒的に足りなかった。
無垢の木は湿度の変化によって「動く」「あばれる」。
木目の方向を考えながら、その「動き」や「あばれ」を手なずけなければならない。
頭では知っていても経験的な知識ではなかった。

丸太から製材をして天然乾燥させ、次に人工乾燥にかけ、
養生期間を経て初めて材として使えることも知ってはいたが、
実際に体験したことはなかった。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森_家具デザインでは多くの場合、製材された材料を前提にして考える。
ところがMOCTAVEは、その製材のところから考えなくてはならない。
材料にする広葉樹は、小径木の若い木が多く、それだけ動きやすい。
けれども製材の仕方一つで、作りやすくなり無駄も減らせる。

さらに樹種本来の色味をだすためには、材によって天然乾燥の期間も変わってくる。
そんな製材方法までプロジェクトチームで考え、進めていくのがMOCTAVEなのである。
それが正しい時もあれば間違っている時もある。
答えは木が教えてくれる。

だから毎日、ぼくたちは木と知恵くらべをしている。
そして今、おそらくぼくは日本の家具デザイナーとして、とても貴重な経験をしているのだと思う。

<  ブランドストーリー 目次  >

 

家具 ・ インテリアショップ MOCTAVE | 東京・代官山

 

第2章|意匠の道のりⅠ

2015.08.07 Friday

 

第2章 意匠の道のり     家具デザイナー 山本真也

― 広葉樹に圧倒された ―

「小径木の広葉樹の木材を活かしたい」
「その多彩な表情の素晴らしさを、多くの人に知ってもらえるような何か、を作りたい」

初めて会ったとき、プロジェクト・オーナーの河尻さんはそう語った。
連れて行ってもらった倉庫で積み上げられた木材を見上げると、木の力強さに圧倒された。
まるで語りかけてくるような迫力とでも言ったらいいのだろうか。

初めて耳にする樹種も多く、こんなに種類や色があるとは思ってもいなかった。
気がつくと「この表情をどうしたら伝えることがでるだろうか」と考え始めていた。
今から思えば、積み上げられた木材の前で二人の気持ちが共振したのかもしれない。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_デザイナー

そして、これを表現するのは家具しかないと確信した。
なぜなら、家具は人々の生活の中に根差して一緒に暮らすものであり、
服などと同じようにその人の考えや生き方、感性そのものを表現するものだからだ。
特に木の家具は人とともに暮らす中で、人と同じように成長していく。

 

 

― なんて美しい家具なんだろう ―

高校生のとき、美しい家具に魅せられた。
美術が好きで、少年時代までは絵描きになりたいと思っていた。
それが大きく軌道修正したのは、デンマークの家具デザイナーである
ハンス・J・ウェグナーのザ・チェアを見たときだった。

デザインはもちろん素晴らしい。
しかし、それ以上に作った人の心まで伝わってくるようで、衝撃だった。
そして、家具デザインをやろうと決意した。
美大に進んで、絵ではなく、プロダクトデザインを学んだ。
とにかく家具をデザインしたかった。

<  ブランドストーリー 目次  >

 

家具 ・ インテリアショップ MOCTAVE | 東京・代官山

 

New Entries

Categories

Back Numbers