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Category : 樹と木の話

第4章 | 森の響き [欅・栗]

2015.08.23 Sunday

 

モクターブ 広葉樹図鑑P24 [右]
欅   ケヤキ(ニレ科)
Zelkova serrata

箒を逆さにしたような樹形で、枝ぶりが美しく街路樹になっているため、
日本人になじみの深い樹です。
時に30m以上の巨木に成長し、日本各地で銘木となっているケヤキは
「けやけき木」という言葉が語源という説がありますが、「槻(ツキ)」と呼ばれることもあります。

材は硬くて強く、弾力性もあります。木目が明瞭で深みのある色合いのため
古くから優秀な材として家の内装、構造材、建具、工芸品など幅広く使われ、寺社仏閣の柱などにも見られます。

 

[左]
栗   クリ(ブナ科)
Castanea crenata

通常、食用として売られている栗は栽培されたもので、
材として用いるのはこのように山に生えているヤマグリ(シバグリ)です。
小さいながらも実をつけ、甘みのある味は食用栗より上かもしれません。

縄文時代の日本人にとってこれは主食でした。
材はタンニンを多く含み、水に極めて強く腐りにくいため家の土台に使われ、
かつては枕木にも多く使われました。
やや黄色味を帯びた淡褐色で、年輪がくっきりしているため素朴な雰囲気があります。

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第4章 | 森の響き [黄檗・桂]

2015.08.22 Saturday

 

モクターブ 広葉樹図鑑P23[右]
黄檗   キハダ(ミカン科)
Phellodendron amurense

コルク質の厚い鬼皮を剥ぐと、名前の通り鮮やかな黄色の厚い内皮が出てきます。
この内皮にはベルベリンという非常に苦い成分が含まれ、
漢方胃腸薬に使われるため、栽培しているところもあります。

ミカン科というと大木をイメージできませんが、キハダは大きいもので
25mぐらい、直径も60cm以上になります。
材は肌目が粗く黄味がかった褐色をしており経年変化で褐色が強くなってきます。
非常に軽く軟らかいのに水湿に強い材です。

 

[左]
桂   カツラ(カツラ科)
Cercidiphyllum  japonicum

根元から株立ちすることが多く、30m以上もの大きな木になることがあるため森の中でもよく目立ちます。
その幹に比べ、丸いハート型のかわいらしい葉をつけます。
この葉が落葉を迎えるときは甘い独特の香りがするので、
東北地方では「お香の木」と呼ばれることもあるそうです。

ちなみにシナモンは漢字で「桂皮」と書きますが、この木の皮ではなくクスノキの仲間です。
材の色が濃い目に出るものを「ヒガツラ」と呼び、良材とされています。

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第4章 | 森の響き [樫・鬼胡桃]

2015.08.21 Friday

 

モクターブ 広葉樹図鑑

P22[右]
樫   カシ・シラカシ(ブナ科)
Quercus myrsinaefolia

カシの木などブナ科に属すほとんどの樹種がドングリを実らせますが、
「ドングリ」という名の樹はありません。
もう一つよく誤解されるのは、「カシ」は英語では「オーク」と訳されることが多いのですが、
実際はミズナラがそれに当ります。

材は淡い紅褐色をしており、「木」偏に「堅い」という字のごとく、非常に硬く重厚な材質です。
広葉樹の中では最も比重が重いため火もちが良く、薪としても非常に人気があります。

 

[左]
鬼胡桃   オニグルミ(クルミ科)
Juglans mandshurica

川や谷沿いなど湿った所に生育しています。実の殻は非常に硬く、
スタッドレスタイヤに利用されることもあります。
また市販される食用クルミに比べて形が尖っていて割りにくいのですが味はよく、
油も家具などの手入れ用の優れたオイルになります。

その材は狂いや割れが少なく軽軟なため家具などに使われるほか、
銃の衝撃を吸収する台座の材として最適とされています。
同じ仲間である外材のブラックウォールナットに比べると扱いやすい材です。

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第4章 | 森の響き [瓜膚楓・鵜松明樺]

2015.08.20 Thursday

 

モクターブ 広葉樹図鑑

P21[右]
瓜膚楓   ウリハダカエデ(カエデ科)
Acer rufinerve

名の通り、若い時期の枝・幹の樹皮は緑がかっていて瓜の肌そっくりに見えます。
しかし成長して大径木になるにつれ緑色は消え、
灰色がかってきて瓜のような縦じまも薄くなってきます。

葉は2カ所の切れ込みがあり、この樹であることを判別する有力な手段となります。
材は色が白っぽく割れにくいため、こけしの材料として使われています。
また他のカエデ材と同様、板にすると滑りにくいためフローリングにも適しています。

[左]
鵜松明樺  ウダイカンバ(カバノキ科)
Betula maximowicziana

樹皮は燃やすととても火力が強く、焚き火などの種火になるため
「鵜飼いの際の松明(たいまつ)」として使われたことが「ウダイ」の名の由来です。

岐阜県あたりが南限とされ、材は「マカンバ」あるいは単に「カバ」と呼ばれます。
硬くて強く、加工性に優れ、かつ反りや狂いも少ないため高級材として扱われますが、
しばしば木材業界では「カバザクラ」の名前で取引されることがあるため、サクラの仲間と間違える人もいます。

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第4章 | 森の響き [板屋楓・棈]

2015.08.19 Wednesday

 

モクターブ 広葉樹図鑑P20[右]
板屋楓  イタヤカエデ(カエデ科)
Acer mono Maximowicz

岐阜県では「イタギ」と呼んでいます。
カエデの中では葉が大きく切れ込みの数が少ないのが特徴ですが、
変異種も多く微妙に形が違うものがあります。

北米にはシュガーメープルという、メープルシロップを採取するカエデがあります。
イタヤカエデも樹液には糖分があり、煮詰めればメープルシロップの代用品になります。
材は白っぽく緻密で光沢があって美しいため幅広く使われ、
特に家具やフローリングのほか、弦楽器などにも使われます。

 

[左]
棈  アベマキ(ブナ科)
Quercus variabilis

名前はあまり知られていませんが、西日本の里山では多く見られるドングリの成る木です。
クワガタ虫が好きなクヌギとよく似ていますが、
アベマキとの区別はドングリの殻の部分の違いなどで判別できます。

深く裂け目のある樹皮はコルク質が厚く、押すと弾力があり、その様相が「あばた」のようなので
「あばたまき」が訛ったものがアベマキの語源だとも言われています。材は重くて硬いため家具などにも使用できますが、あまり出回っていません。

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第1章|樹への想いⅣ

2015.08.06 Thursday

 

第1章 樹への想い   プロジェクトオーナー河尻和憲

― 「大きな物語」を紡ぐ ―

今、日本の広葉樹の木材供給は衰退している。
その理由は、大量消費の中でコストの低い輸入材が使われるようになったためで、
その結果、高山でも家具用としてはほとんど供給されなくなっている。

日本の材を使っていかなければ、こうした衰退を止めることはできない。
山も森も、林業や木材業が成り立たなければ荒れていき、よい木材を供給できなくなってしまう。
このプロジェクトは、小径木の広葉樹をできる限り使うことで
日本の森林を育て循環させ、守っていこうとしている。

今の日本で販売されている家具のほとんどは
中国や東南アジアの工場で大規模ラインによって生産されている。
ラインで生産される家具は一人の職人で一つの家具を作り上げるわけではない。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_職人Ⅳ-2たとえば、部品としての椅子の脚を削り出す人、その脚を組みつける人。
そのように細分化された作業で構成されている。

けれども、MOCTAVEの家具職人は1人で椅子1脚を作る。
1人でテーブル1台、キャビネット1台を作るのだ。
家具のことが好きで好きでなければ、そんな職人になることはできない。
そして、その家具職人の技術が継承されていくためには
愛される家具を送り出し、使い続けてもらうことしかない。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_職人Ⅳ

 

―  使い込むほどに愛着の湧く家具に ―

だから、MOCTAVEは壊れたり古くなったりしたら、捨ててしまうような家具ではない。
20年でも30年でも使い、そしてもし傷んだら修理して使ってほしい。
そんな生き方を愛する人にこそふさわしい家具である。

2007年のプロジェクトのスタートから試行錯誤し、ウィスキーが樽の中で熟成するように、
時間をかけてじっくりと磨き上げられたMOCTAVE。

今、ここに送り出すことができる喜びを噛みしめている。

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第1章|樹への想いⅢ

2015.08.05 Wednesday

 

第1章 樹への想い   プロジェクトオーナー河尻和憲

― 運命的な出会い ―

広葉樹については詳しくなった。
詳しくなればなるほど、もっと多くの人に知ってもらいたいという想いが募った。
しかし、製材して天然乾燥させている木材を、どうしたら活かすことができるのか・・・。

そんなときに出会ったのが、化粧品会社の什器や空間デザインも手掛けていた家具デザイナーの山本さんだ。
東京から岐阜に会いに来てくれた。

積み上げられた材を見つめて、立ち尽くし、ぽつりと言った。
「木が語りかけてくるようで圧倒された」

運命的な出会いだった。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森Ⅲ

― モクターブ・プロジェクト ―

私と山本さんが手さぐりで始めた家具作り。
そこに大きな援軍が現れた。家具プロデューサーの大澤勝彦さん。

岐阜の広葉樹を使う。高山の家具職人の技術を最大限に発揮してもらう。
そんな想いを共有しつつ、家具プロデューサーが加わることで
本格的なビジネス・プロジェクトの立ち上げとなった。

木が奏でる音楽のような調和を暮らしの中で楽しんでもらいたいという想いを、MOCTAVEには込めている。

 

―  常識破りの家具作り  ―

デザインは家具にとって最も重要な要素である。
何度も試作を重ね、多くの人からレビューを受け、それを繰り返しながらデザインが練り直された。
そうしてようやく思い描いたデザインに到達することができた。
ただ、そのデザインは家具作りの常識とは、かなり異なったものである。

普通の家具は大径木の木材で、できる限り工程数を少なくして効率的に作る。
そうしなければ、採算が取れないからだ。

しかし、モクターブ・プロジェクトが行きついたデザインは
効率化とコストを優先する家具作りから見れば常識破りだ。
この家具は小径木の木材も多く使い、広葉樹が持つ驚くほど多彩な表情を取り入れる。
だから工程数は普通の家具の何倍にも達する。
それほどに手がこんでいるし、作り方も難しい。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森_職人Ⅲ

― コンセプトと信念が共鳴した  ―

MOCTAVEの製造は高度な技術が要求され、高コストも予測される。
やはりこのプロジェクトのコンセプトに共感してくれる作り手でなければ・・・。
そうして多くの家具職人さんたちに試作を依頼した。

MOCTAVEに共感して担ってくれる家具職人さんたちは、一人が一つの家具を責任をもって手掛ける。
そうした作り方を信念にしている人たちに出会うことができた。
そして不思議なことに、みな高山の家具職人でありながら
全国各地から家具を作るために高山に移り住んできた人たちだ。
しかも誰もが木と樹のことが大好きで、その魅力も難しさも知り尽くしている。

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第1章|樹への想いⅡ

2015.08.04 Tuesday

 

第1章 樹への想い   プロジェクトオーナー河尻和憲

― この樹を何かに活かせたら ―

広葉樹が持つ表情の面白さに気がついたのは、10年程前のことだ。
杉や檜などの針葉樹とともに、非常に多くの種類の広葉樹も山から切り出され工場に運び込まれてくる。
ただただ、その多彩な表情に魅せられた。すべてチップにしてしまうには、あまりにも惜しかった。
そう思った木は製材し、天然乾燥のために寝かせておいた。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森Ⅱ

とりあえずの目的はなかった。
あったのは「これを、いつか何かに使ってみたい」という漠然とした想いだけだった。
そして同時に、木材としてだけでなく、森に生えている樹のことを
もっと知りたいという想いに駆られるようになった。

樹のことについてセミナーがあると聞けば、どこへでも出かけた。
本も数え切れないほど読んだ。気がつけば森林インストラクターの資格も取っていた。
今も、年に何度かは、森の中で樹のことを子供たちに教える。

 

―  ドングリ拾い ―

毎年秋に、ある目的をもって山に入り続けている。

その目的とは、ドングリ拾い。
自分を魅了してやまない広葉樹を種から育てみたいと思ったのだ。
毎回数百個のドングリを拾い、三日間水に漬けておく。
その水も、ドングリが酸欠で死んでしまわないように流水である。

虫に食われたものは拾わないようにしていても、それでも虫食いが混じる。
虫に食われていない、沈んだドングリだけを湿らせたオガクズに埋めて冷蔵庫に保管する。
秋の間に冷蔵庫の中で根が出る。そして翌年の春に鉢に植える。

拾ったドングリの全部が発芽にまで至るわけではない。
自然の営みは厳しいものだと、気づく瞬間でもある。
そして二年を過ぎると、鉢から庭に移植する。
こうして育った苗木は、とても愛おしい。

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第1章|樹への想いⅠ

2015.08.03 Monday

 

第1章 樹への想い   プロジェクトオーナー河尻和憲

― 広葉樹に魅せられて ―

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森たとえば朴(ホオ)の木は、割ってみると中は淡い灰緑色をしている。
けれども年が経つにつれ暗く濃い緑褐色になっていく。
あるときからそんな広葉樹の持つ奥深い世界に魅せられてしまった。

広葉樹には実にさまざまな表情がある。
まっすぐに伸びる樹種が多い針葉樹と違って、太く曲がっているものが多い。
幹も固い。立っている様も個性的だ。
同じ樹種でも生えている場所によって表情がまるで違う。
一本の樹の中でも南側か、北側か、根元に近いか先端部かで色合いや木目の表情が変わる。
そして時間の経過によっても変化するのだ。

私が、破天荒ともいえる挑戦的な家具プロジェクトを始めようと決意した出発点には
このような広葉樹の持つ多様性と美しさへの驚きがあった。

 

―  森が恋しい ―

岐阜で育った私にとって遊び場は雑木林だった。
カブトムシやクワガタをとったり、樹の上に秘密基地を作ったり。

当時はテレビゲームなどない時代。
でも雑木林にはアイデア次第で遊びのネタはいくらでもあった。
樹が、森が、すぐそこにあって、それが当たり前の環境の中で育った。

MOCTAVE_広葉樹_木材_家具_森2だから東京の化粧品会社に勤めるようになっても、いつも田舎の風景が心のどこかに在った。
樹や森がそばにないことが、自分の中の何かが欠けているような気がしてならなかった。

サラリーマンを辞めて故郷に戻ってきたのは、紙の原料を作るチップ工場を継ぐためだった。
長年勤めた会社員としてのキャリアを捨てることには、周囲から驚かれ反対もされた。
けれども心の中の深いところでは、これで樹や森に囲まれて暮らせる、
心にしまっていた自分を取り戻せるという想いもあった。

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